覆る常識が世界を広げる|おすすめ特殊設定ものミステリー
ミステリーというと本格ミステリーを筆頭に、社会派、ハードボイルド、など様々なジャンルがありますが、本記事では最近よく見かけるようになった “特殊設定” ものと呼ばれるジャンルの中から、筆者の独断と偏見で選ぶおすすめ作品をご紹介したいと思います。
“特殊設定”ものミステリーとは?
作品をご紹介する前に“特殊設定”ものミステリーとは何ぞや?という方もいらっしゃるかもしれませんので、簡単にご説明しますね。
ミステリーとは現実の世界に存在する要素で謎や事件が起こり、それを主人公が解決していく・・といった流れが一般的でした。
ところが “特殊設定” ものミステリーでは、現実とはかけ離れた要素が含まれてきます。(例えば、霊、タイムリープ、特殊能力など)
ミステリーに特殊な設定を持ち込むと “何でもあり” になってしまい、もはやミステリーではなくなる・・と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。
あらかじめ特殊な設定、条件を最初に前提として明示し、その前提の中で物語が進行することによって、ミステリーとして成立させています。
むしろ“特殊設定”の要素が加わることによってミステリーの世界は大きく広がり、更に奥深くなっていったとも言えます。
本記事ではそんな“特殊設定” ものミステリーの中でも、筆者が実際に読んだ中で、人におすすめしたいと思える作品をご紹介します。
おすすめ“特殊設定”ものミステリー
①『屍人荘の殺人』
本ブログでは何度もご紹介している今村昌弘さんの代表的作品、そしてシリーズの第一作目で、“特殊設定”というジャンルにこだわらなくともミステリーとして間違いなく名作です。
おすすめ“特殊設定”の記事でジャンルにこだわらなくても面白いって書くのもどうかと思いますが・・・
本作の “特殊設定” は盛大にネタバレになるので控えますが、魅力についてはネタバレなしで別記事にまとめているので、ぜひ↓をご覧ください。
②『七回死んだ男』
本作での “特殊設定” はいわゆる “タイムリープ” 。
著者の西澤保彦さんのは他にも面白い“特殊設定”ものを数多く書かれていますが、本作はその中でも特に読みやすい印象です。
主人公は定期的に同じ一日を繰り返してしまう「反復落とし穴」、自分でコントロールできないタイムリープを一定期間繰り返してしまう状態におちいる特な殊体質の持ち主。
祖父の資産をめぐる親族内のいざこざに巻き込まれ、やがて起きた大きな事件を特殊体質でもって解き明かしていく・・といった物語。
ややこしそうな特殊設定の割に前提説明など導入部から非常に読みやすく、初めての “特殊設定” ものとしても非常におすすめな作品です。
コメディータッチな部分もあって、起こる事件は悲惨なのに笑える部分も多いです。
③『medium 霊媒探偵城塚翡翠』
2022年にドラマ化もされている、相沢沙呼さんの作品。
本作での“特殊設定”はタイトル通り“霊媒体質”。
探偵役の少女が死者からの声を聴き、その相棒となる作家がその声と論理を組み立てて謎を解いていくスタイルのミステリー。
本作はとにかく、最終章からラストに向かっての衝撃が凄い。
本作が面白いのは間違いないのですが、このテーマの記事でご紹介していることを一応お詫びしておきます・・理由は書けません。
④『透明人間は密室に潜む』
本作は新世代のミステリー作家と呼ばれる、阿津川辰海さんの作品。
タイトル作を含む、4編の短編集です。
本作の “特殊設定” はもちろんタイトル通り“透明人間”。
透明人間になってしまう病が存在する世界での犯罪を描いたミステリー。
透明人間はミステリーに用いるとフェアでなくなりそうな感じがしますが、前提、事件の内容、解決に至るまでが非常に上手く組み立てられていて、アンフェアな印象は全く受けません。
⑤『むかし、むかしあるところに死体がありました』
本作は青柳碧人さんの作品。
日本人なら多くの人が知っているであろう、花咲か爺さん、一寸法師、鶴の恩返し、浦島太郎、桃太郎、といった昔話の世界をベースとしたミステリー。
表紙の雰囲気とパロディに思えるタイトルから軽く読み始めると、思いのほか奥深い本格ミステリーであることに驚かされます。
続編やアンデルセン童話をテーマにした別シリーズ作品も出版されており、特に↓の作品などは映画化もされているので、ご存じの方も多いかも・・こちらもおすすめです。
最後に
“特殊設定” ものミステリーの作品紹介、いかがだったでしょうか。
普段ミステリーを読まない方にも、よく読むけれど新しい刺激が欲しくなった方にも、
ぜひ一度は触れてみて欲しいジャンルです。
本記事が読書、小説好きな方の読書体験を向上させるお役に少しでも立てれば幸いです。
ではまた次の記事でお会いしましょう。