嫌な気分が魅力になる不思議・・おすすめ【イヤミス】小説5選
ミステリー小説は読み終えると、謎や伏線が回収され『スッキリ』としたラストが迎えられる作品も多いですが、中にはそうではない作品があります。
『イヤミス』というジャンルに分けられる作品で、読んだ後『イヤ』な気分になる『ミステリー』がこのように呼ばれています。
なぜ読んだ後に気イヤな気分になるものをわざわざ読むの・・?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これはこれで人気のあるジャンルで、このジャンルの中で特に人気のある作家さんなどもいらっしゃいます。
人間というのは不思議なものでハッピーエンドやわかりやすい結末だけでは満足できなくなる生き物なのかもしれませんね・・。
怖いもの見たさ・・や、人の〇〇は蜜の味・・に通じるような。
本記事ではそんな『イヤミス』ジャンルの中から、自身が実際に読んでオススメできる作品を
5つ ご紹介したいと思います。
【イヤミス】小説おすすめ5選
①『不審者』井岡瞬
家族4人で平穏に暮らす里佳子の前に突然現れた1人の客。
井岡瞬 『不審者』 集英社 文庫版巻末あらすじより引用
夫の秀嗣が招いたその人物は、 20年以上音信不通だった秀嗣の兄・優平だと名乗る。
しかし姑は 「息子はこんな顔じゃない」と主張。
不信感を抱く 里佳子だったが、優平は居候 することに。
その日から不可 解な出来事が続き・・・・・・。 家庭を侵食する、この男は誰なのか。
一つの悲劇をきっかけに、 すべての景色が一転する。 緊 迫のサスペンス&ミステリ。
平凡な生活の中に紛れ込んでくる“異物”によって、日常が狂っていく怖さが描かれています。
ただこの物語の本当の怖さは “異物” だけではなくて・・
と・・これ以上はこの作品が『イヤミス』と感じた答えとなってしまうので、詳しくは書けませんが、ぜひその結末を確かめてほしいです。
②『秘密』東野圭吾
妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美 を乗せたバスが崖から転落。
東野圭吾 『秘密』 文藝春秋 文庫版 巻末あらすじより引用
妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。
その日から杉田家の 切なく奇妙な”秘密〟の生活が始まった。
冒頭出だしから衝撃的なこの物語。
後半の展開がかなり秀逸な『イヤミス』といった印象です。
娘の肉体が助かったこと、妻の意識が残ったこと、父親・夫の目線から見てほん少しの救い
と期待を感じさせながら進む物語の結末は・・
読み手の性別、によって物語のラストで迎える『イヤミス』展開の感じ方にかなり差があるかも・・と感じた作品でした。
ちなみに1999年に映画化もされています。
男性目線、かつ所帯を持つ身として読んだ私にとっては、かなりダメージが大きい作品でした・・
③『リバース』湊かなえ
深瀬和久は平凡なサラリーマン。
湊かなえ 『リバース』 講談社 文庫版 巻末あらすじより引用
自宅の近所にある〈クローバー・コーヒー〉 に通うことが唯一の楽しみだ。
そんな穏やかな生活が、越智美穂子との出会いにより華やぎ始める。
ある日、彼女のもと へ『深瀬和久は人殺しだ』と書かれた告発文が届く。
深瀬は懊悩する。遂にあのことを打ち明ける時がきたのか・・と。
“イヤミスの女王”とも呼ばれる湊かなえさんの作品で、割に王道のミステリーかと思わせながら予想外の結末が・・ といった感じの内容です。
個人的には後で紹介する『告白』の方が衝撃は大きかったのですが、こちらも非常におもしろい作品なので、ぜひ先に読んでみて欲しいです。
全く『イヤミス』と関係無いのですが、この作品を読むとコーヒーが
飲みたくなります。
④『告白』湊かなえ
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
湊かなえ 『告白』 双葉社 文庫版 巻末あらすじより引用
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語
は始まる。
語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。
こちらも先程ご紹介した作品と同じく、湊かなえさんの作品でデビュー作なのですが、個人的
に感じた衝撃度はこちらの方が上でした。そして『イヤミス』としての展開も・・
イヤミスというくくりでご紹介しながらアレなんですが、予想ができない物語の展開とテンポ感が非常にすばらしく、これがデビュー作というのが本当に驚きだった作品です。(本当におもしろい作品!)
ちなみに2010年に映画化もされていて、当時映画館で見たのですが、かなり物語の世界観が
原作通りに表現されている印象でした。なので映画の方もオススメです。
⑤『向日葵の咲かない夏』道尾秀介
夏休みを迎える終業式の日。
道尾秀介 『向日葵の咲かない夏』 新潮社 文庫版 巻末あらすじより引用
先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。
きい、きい、妙な音が聞こえる。 S 君は首を吊って死んでいた。
だがその衝撃もつかの間、 彼の死体は忽然と消えてしまう。
一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。
「僕は殺されたんだ」 と訴えながら。
僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。
あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
2005年初版、とかなり前の作品なのですが、紹介されている読書家さんが非常に多く、
人気のある作品で、読んでみると実際その理由にうなずける作品でした。
上で引用しているあらすじだけを見ると、少しハードかつSFチックな展開はあるものの、
読みやすそうなミステリーに感じるのですが・・全くちがいます。
重く、そして少年の物語の闇に引き込まれます。
ただ物語としては本当におもしろい・・それは間違いないです。
今回ご紹介した中で『イヤミス』としての魅力は一番かも・・
読んでる最中に手に変な汗をかく場面が何度かありましたが・・
【最後に】イヤな気分も癖になる、イヤミスの魅力
ご紹介させていただいた作品はどれも本記事のタイトル通り、読み終えた後『イヤ』な気分に なれることはまちがいありません。
ただ『イヤミス』イコール読後感が悪いのか?、といえばそれは少し違います。
綿密に練られた物語の展開、伏線、登場人物、どんでん返しなどによってむかえる最後の
『イヤ』な気分は、どこかしら “してやられた感” があって、そして癖になる魅力でもあるのです。
だからこそ、それなりに人気のあるジャンルなんでしょうけど・・
普段こういったジャンルにあまり触れられていない方も、ぜひ一度手に取られてみてはいかがでしょうか。
思わぬ魅力に、癖になってしまうかもしれませんよ?